安倍氏の死、戦後日本の転換点となるか

 安倍晋三元総理暗殺事件は、戦後日本史上の1つの折り返し地点になる予感がする。

 犯行を単に「民主主義へのテロ行為」として非難するだけでなく、日本社会はなぜここまで来たのかという総括に動乱の続く世界を絡めて総合的に省察する、という対応が求められている。マクロ、ミドルとミクロという3つのレベルに分けて考えたい。

 まずは、マクロレベル。トランプやプーチン、そして安倍氏といった真っ当なリーダーが引きずり降ろされたり、叩かれたり、殺されたりするという昨今の世相は、何を意味しているか。オルテガいわく「超民主主義」の問題が横たわっている。民主制が暴走し、独裁化する時代だ。

 時代は、民度・民意のアップグレードと民主主義のダウングレードを求めている。数年前から言ってきたように、民主主義は一時停止、ドッグ入り、メンテナンスが必要だ。

 次に、ミドルレベル。「トランプ・プーチン・安倍」というトライアングルの「面」が崩れ、さらに「線」も断たれようとしている。最後に「点」が消える。「点・線・面」という構図は、「各個撃破」戦術によって解体される。

 昨今の世界を見渡し、トランプの盟友は一人ひとり取り除かれつつある。2024年トランプ大統領再選の条件も毀損しつつある。さらに、安倍氏の死によってトランプ・安倍コンビの再登板は消えた。残りは、プーチンだけだ。

 最後に、ミクロレベル。昨年10月3日付けの私の記事『岸田新総裁って、どんな人?』で描かれた岸田氏の人物像とアプローチ、5つのステップは、ほぼシナリオ通りになった。

 岸田氏は、安倍・麻生・甘利という「3A」同盟を利用し、良い子のふりをして権力の座に押し上げられた。私はその時断言した。彼は、必ず「3A」同盟の瓦解を狙う。どうだろうか。「3A」は今、完全に姿を消した。良い子ないし安倍傀儡ともいわれていた人物、安倍氏は人を見誤った。

 岸田氏はその当時、高市票を利用して河野氏をやっつけ、トップの座を手中にした。安倍氏死後、参院選明けに、岸田氏は安倍残党一掃に乗り出し、岸大臣と高市政調会長を引きずり降ろすだろう。

 日本はすでにリーダーを失った。世界も然り。格差や差別でルサンチマン、憎悪を煽る超民主主義の時代において、強いリーダーは独裁者扱いされ、打倒される。

 安倍政権の政策には、賛否両論がある。ただ諸々の制約下において、氏は最善を尽くされ、国家に生涯を捧げた。国葬を行うべきだ。

 安倍さん、長い間、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。そして、忘れません。

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