終盤戦参入の中国事業、出遅れ海外投資のツケ

 私の感覚では、2010年以降の中国市場展開は、ほぼ終盤戦参入に等しい。勝率1割以下くらいで考えたい。

 1994年、私がロイター通信社から上海駐在を命じられたとき、ずいぶん周辺から心配の眼差しを感じた。あのときは、香港ブームで人気が高く、中国本土に目を向ける日本企業、日本人はほんの一握りのまた一握り。

 90年代後半までは、中国市場の序盤戦といって差し支えないだろう。2000年~2009年までの10年は本番で、特に後半までは最低でも投資回収を完了し、できれば中国投資の収穫期でどーんと収益を挙げるパターンが理想的だ。

 2010年以降の中国は完全に終盤戦。中国人の企業家がどんどん海外に資金を送り出しているのに、日本企業、日本人がどーんと中国に押し寄せる。正直いって、乗り遅れている。

 投資とは何か、人気のないうち、有望株を安く買って値上がりをまってピークで売り、儲けるという仕組みだ。幼稚園生でも分かる簡単なことだ。華人富豪のトップに君臨する李嘉誠氏は大したことをやってない、この簡単なメカニズムを忠実に再現させ、繰り返しているだけだった。

 だが、世の中、簡単なことが一番難しい。人間は群衆心理の持ち主であるからだ。ここ2~3年、かの李嘉誠氏は中国本土だけでなく、香港の資産までどんどん処分して欧州へシフトしている。中国の企業家たちは、李をベンチマークとして見ている。日本人だけは同胞の行動にしか目がいかない。そこで大きなギャップが生まれる。

 中国に大挙して押し寄せる日本企業や日本人。中国市場での勝敗の比率を見れば分かる。大方は勝利を諦めて撤退、敗退、あるいは戦死になろう。

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