南部アフリカ紀行(12)~大物遭遇率!サファリガイドは職人の世界

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 サファリ客はみんなライオンやチーターなどの大物を見たがる。しかし、そんなことを言っても、動物は生き物だから、つねに動いている。いつどこで出遭えるかは分かるはずがない。むしろ、出遭えないことのほうが多いくらいだ。

 広大なサバンナのなかでしかも限定されたルートをたどって、遥か遠い彼方のブッシュのなかに隠れている動物を見つけ出すことはほとんど不可能に近い。

 それでも客は客だから、「ライオンが見たいなあ」と期待を膨らませる客に、「すみませんが、実は見れる可能性はそんなに大きくないんです」などで冷水をかけるわけにはいかない。

 するとガイド(兼ドライバーがほとんど)にかかるプレッシャーは大きい。数年前ケニアで目撃した一幕――。

 同じサファリカーに乗っていた欧州人の紳士が大物の遭遇率の低さから露骨にガイドに不満を垂れる。「見れる見れないのが運次第といいますが、しかし運はガイドの腕次第だ。同じサバンナを走り回っても、大物をたくさん見れた客、ちょっとしか見れなかった客、全然見れなかった客がいる。乗っている車が違って、その車を運転しているガイドが違う。それだけです・・・」

 ガイドにはあまりにも無礼ではないか。日本人からみるとほとんど非常識の領域にあるこの欧州人の客だが、あとから現地のガイドにその話を聞くと、こう答えられた。「その通りですよ。そのお客さんの仰るとおり、ガイドの腕次第です。大物を探し当てるガイドはたくさんのチップをもらえるし、出世してサファリ会社を経営している人もたくさんいますよ」

 サファリガイドは要するに「大物探し職人」である。顧客の厳しいときには過酷な要求に応えるべくどんどん腕を磨き、大物遭遇率を向上させる。それ以外に出世する道はない。資本主義の原理の貫徹!言ってしまえば、その一言に尽きる。結構なことではないか。

 エトーシャでのサファリ。私のガイド、セブンさんがどのようにライオンを探し当てたのか。彼は詳しく教えてくれた。もちろん、これは彼の営業秘密なので、ここではすべて書けない。一言だけいえば、2つのスキルが必要。1つはサバンナを俯瞰する全体観をもつこと。もう1つは個体あるいは集団・家族単位の動物の習性を熟知し、その行動を読める力をもつことだ。

 ※本文の写真はすべて、エトーシャ国立公園で撮影したものである。

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