動物を売る動物園、旭山のペンギンと上海動物園の犬

<前回>

 いま、私が飼っている犬、ゴン太くんは、上海動物園から買ってきたのです。信じられないかもしれませんが、上海動物園が動物を売るのです。

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 パンダのような国家保護動物や猛獣以外、家庭で飼える動物なら、相談次第で何でも売ってくれる、と聞いていて、行ってみると、本当だった。犬や猫なら、民間事業主が請け負って、動物園の一角でペットショップを立派に経営しているのです。さすが中国のこと、ここまで商売できるとは脱帽です。

 その動物園ペットショップでは、百匹以上の犬と猫が飼われています。一部展示用になっていますが、残りは販売可能です。どうやら、交渉次第で展示用の珍しい品種も売ってくれるようです。動物園のペットショップで買う理由は、何といっても、品種の豊富さと血統の純正さにあります。もともと展示用の犬と猫なので、かなり品質がよく、グレードも高い。価格も2000~3000元から万元以上とピンきりです。

 邦画で、「旭山動物園物語 ~ペンギンが空をとぶ」と言う映画を見たことがあります。集客力の低迷や財政難で閉園の危機に瀕している旭山では、色々な知恵を絞って「ワンポイントガイド」や「夜の動物園」などの企画を考え出し、なんとか入場者数を増やそうと懸命に努力を続け、ついに大成功した感動的な物語でした。さすが、旭山動物園は、動物を繁殖させて、ペットとして販売することはしませんでした(思い付かなかった?)。

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 動物園といえば、動物を見せるところという考え方だけでは、経営が成り立たない時代になってきました。GMは、車を走る道具として製造し、会社をもメーカーとして考えてきましたが、最終的に法的整理という結末を迎えました。一方、トヨタは自動車を、ライフスタイルを提案するプラットフォームとして位置づけ、創意工夫を凝らし、今日までサバイバルしてきました。「物を作る」時代の終焉と「知を創る」時代の幕開けを無視すれば、企業は、昨今この物の売れない時代には、生き残ることができません。

 動物園も、「動物を見せる」というクラシックな機能を飛び越えて、何とかしなければなりません。上海動物園のペットショップの是非を別としても、旭山同様、動物園として新経営モデルを創り出す意味では評価できます。

 動物園は、動物と接する一時(ひととき)の幸せと思い出を提供する場所で、ペットショップは、動物と一生付き合う幸せを提供する場所です。いまは、物が溢れても、幸せが不足の時代です。ですから、うまく「幸せ」を売るビジネスを創り出せば、必ず成功すると、私は思います。

<終わり>

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