「新・ルックイースト政策」、マレーシアのウクライナ戦争報道

 「ウクライナ・ドンバス地域ではロシア軍は破竹の勢いで快進撃」「ウクライナ軍は続々敗退」「西側メディアもいよいよ事実を認めざるを得ずトーンを変えた」

 日本では見られないマレーシア現地の報道(6月10日付南洋商報)は、真実を語っている。敗戦を実体験し、大本営発表を痛烈に批判してきた日本という国は、不覚にもまたもや大本営発表ならぬ西側報道の垂れ流しに明け暮れ、無節操としか言いようがない。いや、単なる愚なのかもしれない。

 報道の姿勢はプロパガンダに絡んで傾向があるにしても、国際政治は最終的に善悪を超えて国家利益の一点しかない。マレーシアをはじめアセアン諸国はまさに実利に徹しており、露宇戦争に関して勝ち馬に乗る姿勢が見え見えだ。

 シンガポールは先進国という立場もあって一応ロシア制裁の姿勢を示しつつも、社交辞令にとどまっている。逆にリー・シェンロン首相は3月末訪米の際にバイデンにいろいろ進言してきた。アセアン諸国は他人の争いに「どっち側に立つか」という姿勢を表明することはありえないことを伝えていた。

 マレーシアに関してはむしろロシアとの交流を拡大しているくらいだ。アジアの国々はよくわかっている。今回はロシアとウクライナの戦いではなく、中国と米国の戦いだ。実際に中国サプライチェーンのアジア移転は好都合なのだが、ただ短期間に中国に取って代わることができるかというと、答えはノーだ。むしろしばらくは中国に依存せざるを得ない。

 実利のための政治。当たり前の話だが、日本はどうやら正義感に陶酔しているようだ。ウクライナを支援し、ゼレンスキーを国会でライブ演説までさせ、何の得があるのか?

 そういう意味で、アジア各国は冷ややかな眼差しで日本を眺めている。見て真似せず、ただ見るだけの「新・ルックイースト政策」だ。アジアでは、日本が「出る杭」になってくれて良かったと、胸を撫で下ろしているところだ。

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