B層を狙え!心の琴線に触れる選挙戦略

 選挙になると、「B層」という言葉をいつも思い出す。

 B層とは、小泉政権が郵政民営化の広報のために作成した企画資料において、「IQが低いため具体的なことはよく分からないが、小泉純一郎のキャラクターを支持する層」のことを指す。つまり分析力が低く、感情で動く層のことである。

 「B層」という概念は何も小泉政権の選挙に限らず、時代を超え汎用性ある概念として、選挙にとどまらず広義的政治や経済活動に浸透している。

 民主主義下の政治も、大量生産・大量消費時代の経済活動も、「数」で勝負するものなら、B層は絶対に放っておけない主要客層である。B層云々は要するに「マーケティング・イシュー」だ。

 B層の心の琴線に触れる。――このために、政治家も企業家も専門家を総動員してターゲット層を取り込むわけだ。「心の琴線」はどのへんにあるのか、どんな「触れ方」にしたらもっとも効果的か、これら研究は実によくされている。具体的な例示の言及は、選挙期間中だけに機微に触れるのを差し控えよう。

 では、B層とは具体的にどういう人たちか。3つの特徴を挙げよう。

 特徴その1、心の琴線に触れられると、すぐに反応する。たとえば、その「触れ方」はどこか不自然でないかとか、そういうことは基本的に考えず、感情がまず動くのだ。さらにどんな反証があっても、拒絶反応を起こしてしまう。

 特徴その2、何事もすぐに表面的な「善悪」判断をする。事実認識と価値判断を分けることができない。その善悪判断が自分の実利と無関係、あるいはそれに有害であっても、一向に構わない場面も多々ある。事実認識をしたくないからだ。

 特徴その3、総括をしない。自分の意思決定(投票行動や購買活動)が間違っても、自己責任でなく、外部に理由を見出そうとする。そうすると、間違いを繰り返し、いつまでも都合の良いカモになり、B層としてこよなく愛され続けるのだ。

 政治家にとっては、B層の存在は民主主義制度の醍醐味である。

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