ベトナム人が経営する1軒の焼き鳥屋

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 味が良い。ハノイの日本食横丁リンラン通りに、1軒の目立たない焼き鳥屋がある――「とり吉」。以前日本人経営の焼き鳥屋(別屋号、閉鎖)で修行したベトナム人が一族で立ち上げた店。

 日本人が作った焼き鳥とベトナム人が作った焼き鳥。どこが違うかといえば、味はほとんど一緒。しかも創意工夫を凝らした形跡さえある。ベトナム人はほんとうに頭が良い。ただ雇ったら大変で自分のために働くとなれば物凄い知恵が働く。

 この店に似たような店が中国にもある。経営に失敗した日本人オーナーから独立して大成功した中国人料理人(参照:『和食「暁」とショウちゃん、古巣閉店で独立成功』)。サバイバル力のある人は失業しない。逆に古巣が消えたことが、一歩を踏み出すきっかけとなる。

 この世の中、本当に、日本人にしかできない商売って何だろう?しかも買い手がしっかりついて……。もうほとんどなくなりつつある。だからもう親日とか反日ではない。脱日だ。今回、2年半ぶりのベトナム出張でたくさんのショックを受けた。日本人はやはり謙虚にアジアに学ばなければならない。

 「教えてあげる」という上から目線はやめた方がいい。「クールジャパン」などもってのほか。アジアでサバイバル力(生き延びる力)の最弱国は、紛れもなく日本だ。自画自賛できる状態ではもはやない。

 自覚を持たないのが最大の問題だ。

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