マレー半島北部の旅(2)~「文化受信型」華僑ビジネス

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 タイピンには「鏞記酒家」を発見。「鏞記」といえば、焼鵝(ローストガチョウ)で世界的に有名な香港のあのレストラン(ヨンキー=Yung Kee Restaurant)を思い出す。調べると無関係だったことが判明。それでも面白そうなので、夕食はそこで食べることにした。

 メニューをめくっていると、ユニークな料理が目に留まる――面包咖哩蝦(蝦ココナッツカレーパン)。早速頼んでみると、これは絶品。

 正直にいうと、蝦ココナッツカレーもパンも珍しい品ではない。ただ、そのハイブリッドの合体作が素晴らしい。外はカリッと、中はふんわりとした食感のパンは、ココナッツカレーソースとの相性が抜群だ。何よりもカレーをパンにつけて食べるのが美味。次回は、ぜひワインを持ち込んで一緒にいただきたい。

 しかし、これは決して中華料理といえない。そもそも、ニョニャ料理の発祥地マレーシアのことだから、何があっても驚かない。

 「本格〇〇料理」――日本人が「善」とする概念。華人や華僑に置き換えると、そのへんがいかに無節操に見えてしまう。自国の伝統的食文化を勝手に変形させ、「王道」にこだわることなく、どんどん「邪道」を生み出すのである。

 食文化も含めて、日本人は「文化発信」を好む。国を挙げて「クールジャパン」たる自惚れキャンペーンに多大な税金をかけてもほぼ不発に終わった。

 中華系がやっているのは、「受信」である。ローカル文化をどんどん取り入れて本系を変形させ、「王道・邪道」共存の世界を作り上げる。つまり商売の幅を広げ、ポテンシャルを増やすことだ。

 日本人の受信なき発信はある意味で上から目線である。それと同時に「一筋」という美学もあり、結局「善悪」や「美醜」といった価値判断の世界にとどまり、多くの機会損失を蒙る。

 昨今、日本料理店を外国人が切り盛りして大繁盛する事例も多数出ている。私が知っている上海の某日本料理店は商売不振で日本人オーナーシェフが撤退し、店を弟子の中国人に譲ったところで繁盛店に大変身した。

 良い商品が売れるのではなく、売れるのが良い商品だ。

<次回>

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