ニセコ(2)~英語しか通じない、日本の中の外国がこうしてできた

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 「ニセコは面白い街です。英語しか通じない場面って結構多いですよ」。ニセコを本拠地とするNISADE社橋詰泰治社長との会食。冒頭に出てくるのは、言語の話。ご案内いただいたレストラン「Chalet Ivy」(シャレーアイビー ヒラフ)のウェイターは全員外国人。

NISADE橋詰泰治社長と会食、ニセコのレストラン「Chalet Ivy」のウェイターは全員外国人

 全員が日本語得意なわけではない。意思疎通はむしろ英語を使った方がスムーズ。そういうレストランや業者はニセコのあちこちにある。そこで生活していて電話をすると、外国人が出てやはり英語のほうが通じやすい、という奇妙な光景は日常的である。ニセコは果たして日本なのか。正確に言うと、日本の中の外国だ。

ニセコのレストラン「Chalet Ivy」(シャレーアイビー ヒラフ)

 ニセコの不動産相場(同等物件)は、日本国内の一般相場から数倍もかけ離れて高騰している。物価は不動産ほどではないが、やはり高い。いや、ニセコが高いよりも、日本の一般相場が安すぎると言ったほうが適切だ。外国人投資家がニセコに押し寄せたのは、ニセコ相場が日本のような先進国の平均相場に近いと認識しているからだ。

「Chalet Ivy」の料理

 ニセコといういびつな場所ができた(大変失礼な言い方だが)のも、日本社会の構造的歪みから来ているとしか言いようがない。これまで繰り返してきたように、日本国内の一般相場は常識はずれであり、ある意味での「不当廉売」にほかならない。不当廉売といえば、すぐに生産者やサービス業者に責任を擦り付けるのも日本人であり、それが大きな間違いだ。日本社会の場合、消費者はほぼ無原則に守られるが、生産者は無視されている。それが原因だ。

NISADE橋詰社長のご招待を受けて宿泊した、同社運営物件のザ・ヴェールニセコ(The Vale Niseko)

 安いよニッポン、いらっしゃい!いらっしゃい!ニッポンは格安売出し中。コロナ明けには、中国人投資家が日本に押し寄せることはほぼ間違いない。

 アリババの馬雲(ジャック・マー)氏が、約半年にわたり東京に滞在していたことを、数日前の英紙フィナンシャル・タイムズが、所在を直接知る人からの情報を引用して報じた。報道によると、馬氏は家族とともに日本に滞在し、地方の温泉やスキー場も訪れ、日本を楽しんでいるという。

 私独自の情報によると、今の中国人富裕層の間で日本での資産購入(不動産や企業M&A)や日本移住は高い人気を集めている。香港の中国化に伴い、日本は中国にもっとも近い「自由な国」になったのである。日本資産相場の異常な安さ、さらに円安基調も追い風となり、中国人の「爆買い」はむしろビックカメラやマツモトキヨシにとどまらない。

 さらに言ってしまえば、この度の私の北海道出張は、対中(中国人投資家向け)日本投資コンサルの事前リサーチである。

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