私はなぜおせち料理が嫌い?5つの「異常」

 私は、おせち料理が苦手。はっきり言って嫌い。全然美味しくないし、あの異常な豪華ぶりは不自然で、食べる気にもならない。うちは年越しそば以外、全て普段の食事。おせち料理は、見るためのものであって、食べるためのものではない。と、私は思う。5つの「異常」を述べよう。

● 第1、異常な多品種・小ロット

 おせち料理は、市販されているものを自宅でそのまま再現することはほぼ不可能。まずはそれだけ「多品種・小ロット」では、1品ずつ自宅で原材料起こしから手作りするとなると、どれだけ時間とコストがかかるか。だから、おせち料理は、大量生産向きの商品である。現に市販おせちは、加工食品(「工業製品度」の高い食品)の詰め合わせにすぎない。

● 第2、異常な豪華ぶりとクレヨン感

 フタを開けたときに「わあ、すごい!」「おいしそう!」という「豪華さ」「華やかさ」「鮮やかさ」は不自然である。一般家庭ではなかなかその雰囲気を出せない。家庭の手作り料理は所詮、工業製造工程によって作り上げられるものにはかなわないからだ(それが良いのだ)。まず、その異常な色の鮮やかさ、一般の食品以上に着色料が大量に使われていることはほぼ間違いなし。クレヨンを食べているような感覚だ。

● 第3、異常な納期の正確性

 おせちは大量生産であるから、早い段階で製造しなければならない。何よりも、元日に間に合うように、年内大晦日までに配送しなければならない。しかも、品目によっては変質・変色しやすいものも多く、必然的に一般の市販惣菜よりもきつい防腐・防変色(冷凍変性)の添加物を加える必要があるだろう。

● 第4、異常な競争ぶり

 年末を前に「おせち商戦」が過熱化する。際限なく利益を追求するのは資本主義の原理である。巨大なおせちビジネスである一方、参入者も多く、競争が激しい。食品製造業者以外の高級料理店や料亭もプレーヤーである以上、彼らも工業化欠落の問題に直面し、一部あるいは全部の品目を結局外注せざるを得ない。そこで、料亭の「監修」はそもそも生産現場の「監視」になり得ないので、同じ問題が生じる。

● 第5、異常な大衆消費者

 おせち料理は、食事よりも行事である。行事の消費者は、大衆。サンクスギビングやクリスマスの七面鳥(ターキー)、バレンタインデーのバラやチョコレートも行事型の大衆消費にあたる。消費者の行為能力は、マーケティングによって欲求を操作されている以上、主体性を喪失する。その分、むしろ消費者同士の競合的消費がより生じやすく、業者にとってまさに稼ぎ時だ。

 新年を迎えるにあたって、美味しいものを食べたいと、私もそういう願望がある。ただ、個人的な価値観からして画一的な消費行動にはいささか違和感をもっている。冷め切った詰め合わせのおせちとにらめっこしながら、あまり食欲が湧かないのである。

【参考資料】市販のおせちの一部品目・添加物リスト(安部 司:『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事 )
 ● ぶり照焼: 増粘剤(加工でん粉)、着色料(カラメル)、pH調整剤
 ● 数の子: 調味料(アミノ酸等)、トレハロース
 ● いか明太子和え: ソルビット、調味料(アミノ酸等)、増粘多糖類、pH調整剤、着色料(ビートレッド、クチナシ、紅麹)、酸化防止剤(V.C)、ナイアシン、酸味料
 ● 海老入り焼かまぼこ: 加工でん粉、膨張剤、pH調整剤、ソルビット、増粘多糖類、乳化剤、調味料(アミノ酸)、グリシン、香料、着色料(コチニール)
 ● 牛肉ごぼうしぐれ煮: 増粘剤(加工でん粉)、着色料(カラメル)
 ● 鶏つくね照焼: 増粘剤(加工でん粉、増粘多糖類)、調味料(アミノ酸等)、着色料(カラメル)、香料、イーストフード、香辛料抽出物、V.C
 ● ローストポーク: 調味料(アミノ酸等)、リン酸塩(Na)、pH調整剤、酸化防止剤(V.C)、発色剤(亜硝酸Na)、香辛料抽出物
 ● 寿高野豆腐: トレハロース、凝固剤、調味料(アミノ酸等)、着色料(カラメル)、甘味料(カンゾウ、ステビア)、香料
 ● 大根ごまサラダ: ソルビット、トレハロース、酒精、調味料(アミノ酸等)、増粘剤(加工でん粉、増粘多糖類)、酸味料、香料、甘味料(ステビア)、香辛料抽出物、着色料(アナトー)
 ● 信田巻: 加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、ソルビット、グリシン、凝固剤
 ● 紅白なます: 調味料(アミノ酸)、酸味料、酸化防止剤(V.C)

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