似非保守の正体、要は頭の悪い人だ

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 先日、私の記事に「朝日新聞の社説のようだ」というコメントが寄せられた。保守側からすれば、明らかに悪評。朝日新聞は、保守の間でリベラルや左翼的な「符号」になっているからだ。保守なら、反朝日であるべきだ。朝日新聞の社説のようなものを書いたら、「保守らしくない」とやはり悪評だ。

 「らしさ」とは、他人が勝手に抱いた印象にすぎない。「立花さんらしくない」という評判に対して、私はいつも「ご希望に添えずすみません」と答え、諦めさせる。大方の日本人は日々他人から期待される「らしさ」を実践しているから、本当の自分を見失い、疲弊化するわけだ。

 「朝日新聞らしさ」やら「産経新聞らしさ」やら、いずれも「符号」。符号に接した時点で、脊髄反射する。脊髄反射だから、思考は要らない。思考力の低い人、頭の悪い人にとっては、脊髄反射が好都合だ。この人たちを客層とするメディアは、脊髄反射を誘発しやすい符号を盛り込んだ記事をどんどん出す。

 「月間Hanada」とか「月間WiLL」とか、表紙をぱっとみて符号だらけで脊髄反射を起こしまくる。マーケティングの常識だ。この手法に釣られやすいのは、頭の悪い人たちだ。馬鹿からお金を一番取りやすい。マーケティング業界なら誰でも知っている。ただ言わないだけ。「らしさ」満載の符号は、二項対立で対置される概念や人を仮想敵に仕立て上げ、批判する。右と左もまさにその典型だ。

 中国が悪い。韓国も悪い。ロシアは元々悪い、ウクライナの侵略戦争をやったらもっと悪い。日本の大方の保守は、隣国の「悪」が脊髄反射する符号になっているから、頭の悪い人でも簡単に保守に参入できる。気が付いたら、保守のほとんどが符号を追いかけるだけの脊髄反射軍団になってしまっている。保守の劣化である。

 そもそも、保守とは何か。

 保守とは、まずは何を守るかで、次にどう守るかだ。この議論は大変難しく、とっつきにくい。これをやっていたら、大方の頭の悪い人は、保守離れになってしまう。保守ビジネスが成り立たなくなるから、参入障壁を低くしなければならないのだ。

 何を守るか。日本の国益を守るなら、国益とは何か。国益になるもの、ならないもの、国益を損なうもの…、一つひとつ洗い出す。前提を置かずにオープンな議論をする。たとえば、中国が悪であっても、協力したほうが、あるいは利用したほうが、日本の国益になるなら、やろうではないかと。

 結局、論理的思考である。朝日新聞も然り。朝日新聞が言ったからダメでなく、言っていることが国益に反するからダメだ、と。「誰(Who)」ではなく、「何(What)」だ。物事を考えることは、思考力のない人、分析力のない人、頭の悪い人にとって至難の業。だから、勉強しなさいと言ったら、「それは上から目線」と反発してくる。

 「無知の知」をもてば、誰もが賢人になれる。しかし、頭の悪い人は、そこまでたどり着かない。

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