マレーシア移住(15)~運命の分かれ道、海外留学はなぜ重要か?

<前回>

 私はいかに無知か。――創業してしばらく時間が経つと、自覚するようになった。コンサルの仕事をしていて、いかに「情報提供」から「問題解決」、さらに「問題予防」へ持っていくか、私は相当苦労した。

 コンサルは、一見初期投資をあまり必要としない業種だが、実は大きな投資が必要なのだ。それは「勉強」への投資なのだ。「勉強」にはお金も時間もかかる。勉強に時間を割いたところで、仕事を減らさなければならず、利益も目減りする。相当な決心が必要だ。でも、やるしかない。

 中国で起業して間もない2004年、私は40歳にして、大学キャンパスに復帰した。法学修士号と上級経営学修士号(EMBA)の取得を目標にし、復旦大学と中欧国際工商学院(CEIBS)の2校に、同時に通った。面接官に聞かれた。「あなたは、同時に2校に通いながら会社経営ですか?身体は持ちませんよ。覚悟はできているのか」。40代の自分には、1分1秒の争いでためらう余地がない。

 2つの学位を取ったところでいよいよ博士号を目指して、私はロースクール名門の華東政法大学の扉を叩いた。苦戦の末、ついに2013年6月に、日本人初の中国労働法・法学博士号を取得。マレーシア移住のわずか3か月前だった。

2013年6月、中国・華東政法大学法学博士号を取得

 「立花さんは、MBAやら博士号やら、中国進出の日系企業相手だから、初歩的なもので十分ではないか。あなたは、マッキンゼーのようなコンサル会社でも作る気ですか」と、某日本人経営者に嘲笑された。私は、マッキンゼーにはなれないが、マッキンゼーにできないことをやりたかった。

 目標が実現したかどうか、評価するのはクライアントである。自分から言えることは、2つだけ――。

 まず、親の仕送りで勉強することと自分で稼いだお金で勉強することの真剣度が全然違うことだ。学生時代にもっと真面目に勉強すればよかったと本気で後悔した。次に、日本の学校はいかに論理的な思考を教えてくれなかったかを実感したことだ。法律とはその根底にあるのは、論理的思考、そして政治を読む力である。

 「空気」は日本社会を支配する妖怪だと山本七平氏が指摘する。この「空気」を断絶するためにも、物理的に日本から出ていくしか方法はない。個の確立とは、自らの思考力を持つことだ。その前提は、世間一般のルールや固定観念に「なぜ」を問いかけることだ。

 日本の教育でもっとも悪の部分は、「こうであるべきだ」という「べき論」を子供に植え付けることだ。「なぜこうでなくてはならないのか」という「なぜ」を問えない。日本社会は「べき論」の軌道から脱線しない人には保護を与え、逆に「べき論」に「なぜ」を問う人を異端児扱いし、不利益を蒙らせてきた。

 時代が変わった。「なぜ」を問えない人間が受難する時代になった。マレーシアを含めて海外留学なら、若ければ若いほどよく、早ければ早いほどよい。

<次回>

タグ: