マレーシア移住(23)~「逃げ方」いろいろ、海外移住も撤退もあってしかるべき

<前回>

 海外移住には、2つの「逃げ」がよく見られる。まず、日本から海外へ逃げ出すこと、次に、海外から日本に逃げ帰ること。延々と李嘉誠氏の話や中国の話をしてきた目的は、たった1つ――。「逃げる」ことの重要性と「いつ逃げるか」そのタイミングをどう判断するかの重要性を説明したかったからだ。

 「逃げる」ことに対して、大方の日本人は「失敗」をイメージし、「卑しい」などと負の評価を与えがちだが、まったく間違っている。もちろん、そうした場面もあるが、李嘉誠氏の「逃げ方」をみてわかるように、氏は「勝ち逃げ」したのである。適切なタイミングに逃げないと、逆転負けし、損をしてしまうから、うまく「勝ち逃げ」すると。

 逃げは、「負け逃げ」「負け回避の逃げ」「勝ち逃げ」という3種類の逃げ方がある。

 「負け逃げ」にならないように、「負け回避の逃げ」が必要だ。問題が大きく深刻すぎて手に負えない。自らの資源や能力を超え、解決不能で、負けることが明らかになったときは、躊躇うことなく、「負け回避の逃げ」をしたほうが得策だ。損がより少なく済むし、体面もある程度保たれ、また再起するためのリソースも留保できるからだ。

 太平洋戦争では、日本は「負け回避の逃げ」のタイミングを見極めず、最後まで戦ったところで、完全な「負け逃げ」になってしまった。もっと早い段階だったら、「条件付き降伏」もできたのに、そのいわゆる「次悪」を拒否したところで、原爆投下や「無条件降伏」といった「最悪」を受け入れざるを得なかった。

 「負け逃げ」が不本意な受動的逃げであるのに対して、「負け回避の逃げ」と「勝ち逃げ」は、能動的かつ戦略的逃げである。

 今の状況が良い(悪くない)からといって、海外への脱出を含めて将来の対策を考えないのも、みんなが海外移住しているから無思考に追随するのも、どちらも責任ある行動とは言えない。日本から海外へ出ることが必要かどうか、政治や経済、社会のことを勉強し、自分の置かれた環境を分析したうえで、意思決定をするべきだろう。

 さらに海外でしかるべき状況になった場合、引き揚げて日本へ帰国するのも、何も恥ずかしいことではない。いずれにしても、「逃げ出す」とか「逃げ帰る」とか、「逃げ」という意思決定や行動を、単純に負の評価で捉えるべきではない。それはナンセンスだ。

<次回>

タグ: