マレーシア移住(50)~成功するために、どうすればいいか

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● 成功の生まれ方

 ここまで回りくどいと思われがちなことをたくさん書いてきた。どうすれば失敗せずに、成功できるのか、単刀直入に教えてくれよと叫びたくなる気持ちはよく理解できる。マレーシア移住や海外事業の本がたくさん売られている。そのほとんどがいわゆる「Know-How」本。失敗したくないから、成功のKnow-Howを勉強する。一見真っ当な論理ではあるが、果たしてそうなのか。

 成功者の真似をして成功する者は少ない。しかし、失敗者の真似をしてほとんどの人が失敗する。なぜ?成功者の成功体験談、特に成功に導く理論のほとんどは後付けされたものだからだ。

 心理学が教えてくれたこと――。人間の行動は、「思考・判断・意思決定→ 行動」と思われがちだが、実は違う。逆なのだ。ほとんどの人は、「何んとなく」感や「非論理的要素」で行動を起こしてから、その行動を正当化するためにそれなりの論理を肉付けしていくものだ(後付け説)。

 成功とは、その時、その場所、その人物、そのやり方、言ってみれば諸要素・諸状況の偶然たまたまの結合であり、はっきり言って幸運でしかない。たとえ松下幸之助や稲盛和夫は今の時代に生き、その当時のやり方でやったら同じ成功を収められたのだろうか。あるいは天才の彼らは別のアプローチを取り、成功を収め、そこから別の理論が生まれていたのかもしれない。

 故に、コンテキストがもっとも大切だ。松下幸之助や稲盛和夫の成功物語については、そのいわゆる単なる「論」や「説」ではなく、コンテキスト(文脈・脈絡)を捉えたうえで、丁寧に読み解く必要がある。結局、彼らの哲学の学び方、使い方を学ぶことになる。

 では、成功の哲学や法則はあるのか?ある。それは、「天時・地利・人和」(孟子)に尽きる。前述したとおり、諸要素・諸状況の偶然たまたまの結合であり、「運」である。

 戦後日本の高度経済成長はまさに、「天時・地利・人和」3者の結合。その後、時代が変わり、まず「天時」が損なわれ、次第に産業の海外移転・サプライチェーンの海外依存で「地利」も失い、最後にいよいよ「人和」が崩れ始めた。だから、今の日本には国家として成功する要素は見当たらない。

 ただ国家の失敗は必ずしも、企業や個人の失敗になるとは限らない。逆に国家や社会が置かれた不利な状況が、企業や個人にとって「天時・地利・人和」の結合になる可能性も大いにある。その可能性を見出すのは、経営者・個人の叡智に依存する。

● 人間の事物に対する捉え方

 大方の人が興味をもたないが、最も重要なことで、人間の事物に対する捉え方に「5段階(ステップ)+アルファ」の進化がある。

 第1段階、現象・事実を認識する。~When、Where、Who、What
 第2段階、本質を洞察する。~Why1
 第3段階、反証をもって検証する。~Why2
 第4段階、他者の内在的論理を理解する。~Why3
 第5段階、意思決定・対処する。~How
 +アルファの第6段階、上記(の繰り返し)により哲理を抽出する。

 8割以上の人は第1段階から、第2、3、4段階をスキップしていきなり第5段階に飛躍する。つまり「Why」を問うことはない。第2、3、4段階の「Why」の進化(1→2→3)はつまり思考の進化であり、より高品質の第5段階の意思決定を引き出すための前提なのだ。

 特に第3段階(自己否定)と第4段階(敵を理解)は大きな苦痛や屈辱が伴うもので、それらを実施できる人は僅か(私もそこで悪戦苦闘中)。それができる日本人は、1%未満と推定する。

 長い期間第2、3、4段階を繰り返していると、「直観力」(「直感」ではない)が少しずつでき、一部の場合は第2、3、4段階を本当の意味でスキップしてより迅速に第5段階に移ることが可能になる。さらにそこから哲理的な部分を抽出すれば、それがまさに神の居場所へとだんだん近づく道になる。

 このシリーズ連載は一度休みを入れさせてもらい、次回からは、いよいよ実務編に入る。

<次回>

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