世界の産業は4階建てのピラミッド――。
底辺の1階は、エネルギー・農業(ロシア等)。
下層の2階は、労働集約型製造業(中国・アセアン諸国等)。
中層の3階は、知識集約型製造業(独・日等)。
上層の4階は、金融産業(米英アングロサクソン)。
上層からの搾取が進むと、マルクス理論の「階級闘争」が激化する。今は、「底辺・下層」vs「上層・中層」の闘争で下方からの逆襲が起きている。エネルギーや農産物による底辺のストライキが徐々に威力を発揮し、さらに中国サプライチェーンがいざ加わると、地球規模のゼネストに発展する。
世界は決して「民主」vs「独裁」といったイデオロギーの戦いではない。経済的利益の戦いだ。「イデオロギーは経済の土台によって規定される」というマルクス理論は正しい。民主主義は上層が中下層・底辺に対する支配と搾取を正当化するための大義名分にすぎない。
この戦いは、動態的であり、底辺・下層の上方進出(例:中国によるハイテク進出、ドル基軸排除・人民元決済システムの構築)と上層の下方網羅(例:米国による製造業回帰)の様相を見せている。
グローバル化時代は、究極の分業化時代であった。しかし、その時代が終わった。そうすると、産業チェーンの自己完結(All in one)が必要になる。いわゆるグローバル化からブロック化への移行である。それは、「底辺・下層の上方進出」と「上層の下方網羅」という双方向の動き、どちらに勝算があるかにかかっている。時間との戦いでもある。
アメリカは幸運にもエネルギーを一部もっているので、製造業の回帰に専念すればよい。それはトランプ時代からすでに始まっていた。今、アメリカはピラミッドの3階である欧州に残酷極まりない搾取をしようとしている。ロシアのエネルギーを断たせ、米国依存を強化するだけでなく、欧州の製造業を米国に引っ張ろうとしている。その先、米国の産業チェーンの自己完結が出来上がる一方、欧州は空洞化する。
日本はもともと3階の知識集約型製造業のポジショニングからすでに離脱しつつある。しかも、他の階のどれにも所属していない。「ノー・ポジショニング」の日本は、非常階段もないまま、自然落下するしかない。結果的に日欧は同じ運命で、米国から最後の最後まで搾取される。ただ欧州国家はこの冬で覚醒するかもしれないが、日本はまだまだそれに程遠い。
4階建てピラミッドのなか、一番悲惨なのは、中層の3階である。彼たちは、「民主主義」という最大のポリコレを抱え、自縄自縛している。エスタブリッシュメントは既得権益にしがみつき、能動的な米国離反はできないのである。
逆に、アセアン諸国のようなピラミッド2階(下層)はサバイバルしやすい。勝ち馬に乗ることができるからだ。勝者は誰か、皆さんの想像に任せる。
私の予想?予想が外れたら皮肉られるだけだから、言っておこうか。中国は最大の勝者になるだろう。米国はあと数年しかない。だから今のうち取れるものをすべて取ってやろうと、全世界から懸命に巻き上げようとしている。ほぼあらゆる通貨に対しドル高が止まらない。異様な光景だ。
世界が変わる。