東京都立大学経済経営学部の宮本弘曉教授は「25年間も賃金は上がらず、日本人は貧困化している。その原因は『未熟な資本主義』にある」という(同氏著『51のデータが明かす日本経済の構造』(PHP新書))。まとめると、日本はこういう国である――。
資本主義ではない。
競争がない。
クビ切りできない。
馬鹿でも食っていける。
経営者のほとんどが馬鹿。
労働生産性が下がる。
給料が上がらない、上がれない。
だが、解決の方策提言ができていない。なぜなら、方策はないからだ。崩壊を待つのみ。時間が問題を解決する。日本は外圧によってのみ変化する。
私が担当している某大企業のリストラ案件――。
「従業員が路頭に迷うことに責任を感じる」という経営者に私は言う。「違う、路頭に迷う社員を育てた経営者の責任だ」。「安心」を与える企業は最悪だ。トヨタ自動車の講演会でも私はこう話した。
「不安」や「危機感」は人間の自己防衛力、生存力、生命力をアップさせ、進化を促す。そこで安全が生まれる。安全は不安から生まれるのだ。しかし、日本人は与えられる「安心」「安全」を求める。飼い犬だって飼い主が破産したら捨てられる。だから最初から狼であり続けるのだ。
生命力不足、これは「日本症候群」。8~9割の日本人は罹患者である。
友人には「とにかく子供を海外に出せ」と言っている。なるべく小さいうちに、「論理的思考」を海外で学べ。一生がこれで決まるからだ。日本国内の教育は絶望的だ。ほとんどの教師、大方の親自身が思考停止に陥っているからだ。いやいわゆる論客やジャーナリスト、識者の多くも同じ。
思考停止ならまだしも、生き延びるための自己防衛の本能まで停止している。20世紀を代表するプロテスタント神学者、牧師、政治学者、ラインホルド・ニーバーの言葉、名付けてニーバーの祈り――。
神よ、
変えることのできるものについては、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、
変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
識別する英知を与えたまえ。
人生や仕事。思うには、われわれ人間はまず、「変えられないもの」と「変えられるもの」とを分別する力が必要だ。その分別力は「智」という。そして、「変えられないもの」を諦め、「変えられるもの」を変えようと全力を尽くすという行動力は「勇」という。
「智勇兼備」とは、そういうことだ。
日本人の力によって日本を変えることはもはやできない。しかし日本人は一人ひとり自身を変えることができる。それは日本を離れて海外に飛び出すことだ。特に子供、日本人の優秀なDNAを海外で生かせ!