【VOA 取材記事・動画】米国の対中半導体規制に日本も参加へ、中国の先端半導体開発にダメージか(抄訳)

【VOA 取材記事・動画】『米国の対中半導体規制に日本も参加へ、中国の先端半導体開発にダメージか』=中国語記事『日本或将加入美国芯片禁令 中国高阶芯片研发恐受重挫』(2022年12月18日付ボイス・オブ・アメリカ(VOA))(抄訳)

● 対中半導体規制に日本が加入する戦略的意義とは

 国際経営コンサルタント、エリス・コンサルティング社創設者である立花聡博士は、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に応じ、次のように指摘した。「国家というマクロレベルでは、政治が経済を支配するという主観的な願望だ。ウクライナ戦争もそうだが、EUのほとんどの国が米国に追随し、ポリコレのために対露制裁によって経済を犠牲にせざるを得ない」

 立花氏はさらに語る。「日本の半導体産業は台湾や韓国よりも立ち遅れている。そうした意味で日本が米主導の規制に加わっても実損は限られている。だから成り行き任せでやったほうが政治的得点も取れるし、乗らない手はない。その点は米国もよく知っているだろう。米国も政治的に象徴的な連帯という意味で捉えている。日本は米国西側陣営のアジアでの先頭打者だから、出てこなければ米国の面目が立たない。出てこないわけにはいかないのだ」

 立花氏は続く。「たとえ日本がこの度の半導体規制に参加しなくても、中国から大きな利益が得られるわけではない。日本が中国に擦り寄って完全反米の立場に転じることはそもそもできない。日本は半導体規制に参加しなかったら、当事者のどちらにも嫌われるのがオチだ」

● 日本は政策を対中交渉のカードにするかも

 国際経営専門家の立花聡博士は、資本主義の自由市場経済下で、政治が経済を完全に支配するにはそう簡単ではないとし、「ゼロコロナ」政策を例に次のように説明した。「他の民主主義国家には到底無理な政策だが、中国だけ長期にわたって実施できたのも一党独裁体制だったからだ。日本だったら与党自民党は経済界の圧力でそれが不可能だ。民主制国家には選挙があって、経済が政治を支配しているからだ」

 立花氏はさらに述べる。「米国は今何をやっているかというと、『見える手』で『見えざる手』を支配しようとしている。支配できるのか?一部支配できても、すべては支配できない。短期的に支配できたも、長期的には支配できない。中国では『上に政策あれば、下に対策あり』というが、それは世界のどこにも通用する。政治が経済を支配しようとする。それが経済の原理に反していれば、経済は必ず反発し政治を牽制する」

 立花氏は、「たとえ中国共産党であっても、最終的に経済的圧力に耐えられず、『ゼロコロナ』政策を撤廃したわけだから、米国の半導体規制はどのくらい続けられるのか」と疑問を呈した。

● 日本人専門家が規制の実効性を疑う

動画0:44から立花コメント

 国際経営コンサルタント、エリス・コンサルティング社創設者である立花聡博士はこう指摘する。「資本主義体制では、国家の企業に対する支配力も、企業の個人に対する支配力も、制限されている。ウクライナ戦争は、石油・天然ガスというエネルギー産業が絡んでおり、個人どころか、企業も完全にそれらをコントロールすることは難しい。しかし、半導体チップは全く別物で、企業や個人の支配力が大きく、中国が優れた条件を提示すれば、技術の流出は避けられない。その辺の立脚点を変えた方がいいかもしれない」

 立花氏は最後に結論づける。(注:動画0:44から)「米国はゲームのルールに従わない中国を批判しても、中国は『それはそっちのルールで、こっちにはこっちのルールがある』と反論する。今の世界には少なくとも2系列のルールがある。これは事実判断だ。そこで、米国ルールが正しくて良いルールであって、中国ルールは間違っていて悪いルールだというと、それは価値判断になってしまう。価値判断と事実判断は切り離さなければならない。これが問題の本質だ。つまり、米中間の争いは、ルール制定権をめぐる争いなのだ。ゲームのルールを作れるのは米国西側だけで、われわれはこの1つの前提・枠組みの中で物事を論じがちだが、今は問題の本質が別の次元に移っている。多くの問題を理解し、解決するには、立脚点をまず変える必要があるだろう」

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