味噌汁椀にレンゲ、非王道の食べ方をどう捉えるか

  味噌汁椀にレンゲが入っている。――邪道にまでいかなくとも王道から外れる和食の出し方である。海外ではよく見られる光景だ。クアラルンプールにある焼き鳥店「炭家(Sumika)」は、オーナーシェフ大田清氏自ら運営する筋金入りの「王道系」和食店だが、なぜこの辺では意外にも「緩い」のか?

 実はこの疑問をもって久しい。なかなかストレートに本人に聞けなかったので、自分なりに推測(邪推)てみた――。単純にいうと客の習慣に合わせてそうしていると、それだけの話ではないかと。

 この店のメイン客層はマレーシアの華人。中華料理の常識としては、スープは食べるのでなく、飲むものだ。飲むものは、レンゲを使う。王道系和食店では味噌汁とにらめっこしてレンゲを求めるローカル客もいる位だ。その時は、「味噌汁は箸で食べるんですよ」と顧客教育するかどうかは店の経営方針次第だ。

 味噌汁には葉物野菜がゴロゴロしていてレンゲよりも、素直に箸で挟んで食べたほうが効率的だ。華人も箸を使うが、まず箸でレンゲにいったん具材を集めてからレンゲで口に運ぶのだ。正直に言ってそれは美味しい食べ方ではない。レンガが邪魔になるからだ。具材と合わせて直に汁を啜ったほうが断然おいしい。

 だが、理屈は理屈で、人間には習慣というものがある。あえて店としてはそれを矯正する立場にない、というのはある意味で真っ当な考え方だ。その人はその人の食べ方で美味しく食べ、幸せであれば、それでいいのだ。

 「炭家」のような繁盛店をみると、いつも思う――。「クールジャパン」が投資しないところだけはなぜか大成功する。それは官製版がいかにアホな無駄金をドブに捨てていることだ。日本という国家がもう成功しない。ただ、素晴らしい日本人は個人で成功する。

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