上海観測、中国人と日本人の視覚的違い

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 コロナ渡航解禁してから、今年3度目の上海出張。3度とも常宿の花園飯店(オークラ・ガーデンホテル)に泊まった。私が上海に住んでいた頃の花園飯店は日本人のたまり場だったが、今やすっかりごく普通の中国のホテルになった。宿泊客も飲食客もイベント客もほとんど中国人。

花園飯店

 さらに遡って言うと、私が1994年に上海赴任した頃は、中国人と日本人(外国人)の違いが一目瞭然だった。着る物や持ち物、髪型、女性の化粧、そして何といっても表情を見れば、違いが判る。悪く言ってしまえば、当時の中国人は洗練されていないし、落ち着かず自信をもっていないように見えた。

 今は逆転した。むしろ日本人ビジネスマンのほうがすぐに特定できる。スーツを着、リュックを背負い、歩きやすいスニーカーを履いているのがトレードマーク。なかに自信なさそうな表情をしている人も多い。自信というものは顔や姿勢に出るものだと改めて思い知らされた。

花園飯店から望む上海の風景

 不確定性に満ちた世界に生きながら安全や安心を求めれば、残されるのは不安や焦燥でしかない。これはもはや今大方の日本人が直面する現実だろう。過去を参照点にするから、下り坂を実感する。米国も同じだ。中国の追い上げに焦燥感をもち、余裕を失い、懸命に引きずり下ろそうとした。

 日本人は「脱亜入欧」という概念を打ち出した時点から、アジアでの優位性を前提に諸問題を捉えてきた。この前提が崩壊する現実をいまだに信じようとしない。中国否定に使える唯一の根拠は、独裁専制という政治体制だが、残念ながら、中国はその独自の政治体制によってこそ台頭し、日本を追い抜き、アメリカに追い付こうとしている。

 日本人も米国人も、この本質を見落としている。

<終わり>

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