階級社会の真実(14)~下層階級はこうして搾取され続ける

<前回>

 99%の人が下層を脱出することができない。2つ目の理由を解説しよう。

● 下層階級は美しい嘘と虚像を必要としている

 洗脳教育・洗脳文化を自ら受け入れる大衆・下層階級は、自分を縛る鎖の出来を自慢し、その鎖を勲章と見なしてしまう。彼らに誰かが真相を教えてあげてほしい。だが、それは無駄だ。価値のある真相を告知する者が逆に、彼らに敵視され、排除され、もっと大きな不利益まで被るかもしれない。酷いことだ。それは、なぜだろうか。
 
 結論から言えば、大衆が必要としているのは、「真相」でも「価値」でもなく、単に理解されること、同調されること、認められること、癒されること、慰められることである。たとえこれらが、美しい嘘・虚像であっても一向に構わない。美しければいい。日本人の言葉に置き換えると、これが「優しさ」というのだ。最近流行っている「寄り添う」という言葉もこれに該当する。

 政治家が「美しい嘘」をつくのはなぜかと言うと、そうでもしないと、票が集まらないからだ。需要があっての供給であり、政治家の嘘つきを一方的に批判するのは、間違っている。当選しないと、政治家は投入した莫大な選挙資金がすべて水泡に帰し、場合によって餓死してしまうかもしれない。死活問題だ。

 大衆・下層階級は、真相・真理を理解する力も、受け入れるキャパシティも、持っていない。彼らの見たくない、聞きたくない、知りたくない真相・真理を親切に教えてはいけない。そうした場合、それが上から目線と批判され、罵倒され、嚙みつかれ、引きずり下ろされるのがオチだ。大衆の力量と戦えるはずがない。

● 偏向報道で稼ぐメディア

 大衆の狭窄な視野を理解してあげると、いろんな商売ができるようになる。彼らの見たいものを見せ、聞きたいことを聞かせ、彼らの希望的観測に沿って、たとえ実現可能性のないものでも、「美しい虚像」をつくればいい。

 一般のメディア、ジャーナリストや論客は、客商売だから、特定の読者や視聴者層の「需要」に合わせて情報を「供給」する。「需要」とは、その人の立ち位置、価値観、イデオロギー、利害関係に基づく、読みたい、見たい内容、そうあってほしい願望である。

 世には偏向しない情報は存在しない。聖書やコーランでさえ、解釈が分かれるのだから。一つひとつの情報は、需要側に合わせて立ち位置が設定されている。尚且つ需要(視聴率やPV、販売部数等)を増やすためにマーケティング活動も行っている。情報は商材・資本であり、消費者ターゲット層に基づく「差別化」が必要だからだ。

 情報捏造は、低レベルな話で、プロは基本的にやらない。よく使うのは、①意図的な情報選択、②正義・正論(価値、ポリコレ)で裏づける、③修辞学の技術を施す、という3つの手法である。

 ここまで言うと、あたかもメディアや論客が悪であるかのように見えてしまうが、違う。彼たちの多くは職業的標準化によって、無自覚に一連の作業をこなしているだけで、責められるべきではない。繰り返しているが、偏向報道は、商品の差別化にすぎない。大衆・下層階級がメディアを神聖視したり、偏向報道を批判したりするのは、彼らが真相・真理を理解する力も、受け入れるキャパも持っていないからだ。

● 天国と地獄づくりで儲ける宗教

 信仰を標準化した宗教は、量販・産業化(布教)によって利益を上げ、儲かる。宗教は、下層階級のルサンチマンを商材にしている。支配者・上層階級に対する下層の憎悪や反発を緩和すべく、宗教は、彼岸(死後)の天国や地獄たるものを創り出し、此岸(現世)の階級対立を緩和し、支配者・上層階級の地位・利益を維持する。

 ニーチェがいう。力で世界を変えられない人間は、「解釈」で世界を変えようとする。強者や権力は悪であって、連中はいずれ地獄に落ちる。それがキリスト教の原点、ニーチェが「アンチクリスト」という本の中で克明に指摘し、ルサンチマンの原点、本質を抉り出した。

 信仰によって救われるのは弱者の魂だけ。ローマ教皇庁というキリスト教の頂点を見るがいい。その歴史は権力の争奪、政治闘争の歴史そのものではないか。権力が悪であれば、教皇や枢機卿をはじめ、キリスト教の権力が真っ先に地獄に落ちないか。彼らはなぜ心配しないのか。残念ながら、大衆・下層階級にはそれを考える力もなければ、真相・真理を受け入れるキャパもない。彼らが求めているのは、「強=悪、弱=善」「悪=地獄、善=天国」という虚構された論理と正義だけである。

● 下層階級から儲ける方法

 大衆・下層階級には、美しい虚像を見せる一方、僅かな小さな利益を提供することによって大きく儲けることができる。ビジネス一般に通用する不変の法則だ。例示しよう。

 まずは、無料サービス。大衆は「無料サービス」と聞くとすぐに飛びつく。なぜ、無料か?無料サービスは、ボランティアや寄付でもない以上、絶対にどこか裏がある。その裏とは何か?大衆は考えない。

 もっともよくみられる無料サービスは、集客手段である。だが、無料サービスを提供するには、コストがかかる。そのコストは、成約した客から取り返すわけだから、無料サービスに引っかかった客はカモになる。さらに、無料である以上、業者には責任がないのだ。商取引には権利と義務が対等であり、金を払った(支払義務を果たした)時点でクレームする権利が生じる。

 次に、格安商品やサービス。なぜ、安いのか?激化した競争で生き残るための手段であることが多い。私はいつも、格安商品やサービスの原価計算(推算)をする。業者にどのくらいの利益が出るかを知りたいからだ。ほとんど利益が出ない場合は、粗悪な原材料を使うか、社員を搾取するしかないだろう。

 粗悪な原材料は直接に消費者に悪影響を与えるが、業者の社員搾取はどうだろう。搾取、ブラック企業や準ブラック企業が増えれば増えるほど、日本社会の平均賃金を引き下げ、労働条件の悪化を招く。日本人は、給料が安いことに不満を訴えながらも、格安な商品やサービスだけは求めたい。甚だ自己矛盾ではないか。大衆は考えない。

 最後に、ポイントカードや航空会社のマイレージも、同じ原理に基づく。財布にいっぱい詰まっているポイントカード、一つずつ増えていく来店スタンプを嬉しそうに眺める人も、一生懸命航空会社の上級会員になろうとする人も、間違いなく大衆・下層階級の一員である。目先の得をしたいという一念である。自分がどのように搾取されているか、大衆は考えない。

 上層階級が下層階級からいかに消費搾取労働搾取の二重搾取を行っているのか、その真相を探ろうとしないのは、大衆・下層階級である。

<次回>

タグ: