ワクチンパスポート、役に立つのか?

 ワクチンパスポートは、国内行動の自由と海外渡航の自由という2つの効用がある。

 まず、国内行動の自由は、国民の分断・差別問題、検査権の問題(非行政機関、民間一般への検査権の付与には法的問題が伴う)、パスポート貸与の問題(他人のものを使う)、罰則の問題等があって、基本的に取引コストがかかりすぎるため、運用が難しい。

 次に、海外渡航の自由は、2国間の相互承認原則に基づく。たとえば、発行国である日本と非発行国マレーシア(注)の間は、行き来できないだろう。さらに相手国の国内法(入国後の行動に影響)が絡んでおり、そのうえ接種ワクチンの種類による効果の相違など、細かい問題が山積。運用もそう簡単ではない。

 したがって、個人的には、日本の「7月中旬のワクチンパスポート発行」は、オリンピック便乗の意義しかなく、実効性が伴わないものとみている。

(注)マレーシアは当分の間、ワクチンパスポートを発行しないことを発表した(6月20日付「The Malaysian Insight」)。11月に予定されている集団免疫の獲得までには発行しないとしているが、集団免疫獲得してから、発行する意味があるのか?

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