中国が日米欧・西側諸国に負けない理由

 「脱中国」。――中国に勝つために脱中国(デカップリング)しかないと、日米欧・西側諸国がようやく認識できた。しかし、残念ながら、それでも中国に勝てない。理由を述べよう。

 仮に、中国デカップリングができた場合、つまり脱中国に成功した暁に中国サプライチェーンを切り離した場合、どうなるのか。国内市場だけで生きていけない中国にとって死(崩壊)を意味する一方、西側諸国は程度の差こそあるものの、負傷で済む。だったら、勝てるのではないか。いや、勝てない。

 理由は、西側諸国は「負傷」できないからだ。負傷とは、サプライチェーンの再建にかかってくるコストを、民主主義の草の根、国民レベルがこの不利益を受け入れることをいう。日本をみても、生活コストが1割2割アップすることを受け入れてくれる日本人はいるのだろうか。それこそ1割もいないのではないか。

 欧米諸国も結局のところ、みんな同じ。民主主義制度下の民意(総意)はまず、個人ベースの経済的利益に立脚しているため、局所最適にとどまり、全体最適にはならないのだ。政治家は選挙を控えている以上、中国サプライチェーンをばさっと切ることができない。

 昨今、中国から撤退している外資は、政治的理由ではなく、人件費やコスト問題でベトナムや東南アジアにシフトしているだけだ。中国サプライチェーンの完全移転(脱中国)にはならない。

 生活コストの1割2割アップという不利益は、民主主義国家では国民の意思で受け入れられないが、同じあるいは同等以上の不利益(もちろん国民が被害者になるが)を独裁国家なら独裁者の意思決定で受け入れられる。これが独裁体制の強みなのだ。だから、民主主義国家の負傷拒否によって、独裁国家は死を免れることができるのだ。

 独裁者は、党内派閥闘争さえ乗り越えればいいのだが、民主主義国家の為政者は、数千万ないし数億人の生きた人間に向き合っているだけに、課題の本質も難易度も全然違う。そういう意味で、日米欧・西側諸国は勝ち負けという結果以前の問題で、勝負にすら出られない。

 さらに、西側諸国は一枚岩ではないし、数多くの当事者の一致団結よりも分断作業のほうがはるかに簡単。これも中国に有利である。だから、中国は共産党内の闘争やよほどの経済的危機による自壊以外に、負ける可能性はほぼない。

 今、西側諸国と中国の対抗はポーズだけ。人権問題も交渉材料となるカードにすぎない。

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