「痛風鍋」という名に惹かれ、バンコクの博多料理店「照(Terra)」トンロー(Thonglor)店に出向く。白子、あん肝、牡蠣、いくらという痛風鍋。これで本当に痛風になったら、私は一番幸せな被害者だ。それにしても、ネーミングがいい。実は以前マレーシアで「痛風丼」を食べたことがある。

博多名物のごまぶり。ぶりがなく、代わりにかんぱち。不勉強で恥ずかしいが、このごま系統は初体験。うまい、うまい。今までなんで知らなかったのか。今度、福岡に行ったら、たらふく食べたい。
牛レバー刺しも出てくる。日本国内でなぜ禁止になったか。食中毒が発生するリスクがあるからだ。消費者が自己責任で食べたい場合もあろうから、お店の責任を一切問わないという誓約書にサインしてでも、私は食べたい。海外で良かった。日本の法律に縛られることはない。
続いて牡蠣ポン酢やらアワビ刺身やら、どれも絶品。そこで、気が付いたら、この店に日本人シェフがいない。それは特に珍しいことでも何でもない。ベトナムやマレーシアもそうだが、最近ローカルが切り盛りする和食店がどんどん増えている。ただ、教育のこと、気になる。
番頭のサイさんに聞く――。

「あなたは、料理人の修業にどのくらい時間がかかった?」
「3日です」
「えっ?嘘じゃない?」
「本当です。1日目は〇〇を勉強して、2日目は△△…」
「誰から勉強したの?」
「社長です」
「社長さんは今どこにいるんですか?」
「バンコクです」
「突然で恐縮ですが、明日、社長さんに会えませんか?」
「じゃ、電話してみます」
数分後、アポが成立。翌日午後、お店で社長さんと会うことになった。