上海(1)~3年4か月ぶりの上海、まずは毛沢東の湖南料理

 3月10日(金)、クアラルンプールから上海へ向かうマレーシア航空MH388便に乗り込む。「コロナ解禁」後運航再開の第3便である。以前、ピーク時に1日2便もあった上海便は再開にあたって、週2便しかない。搭乗率というと、辛うじて半分も埋まっているのかという状態。まだまだ完全回復までは時間がかかりそうだ。

 コロナ前は、私は3か月1回のペースで中国へ出張していた。2019年11月の出張が最後となり、今回は3年4か月ぶりの上海へ舞い戻る。仕事が溜まっているかというと、そうでもない。Zoomオンライン会議の常態化で、むしろ対面の必要性が低下している。どちらかというと、金融機関に本人が出頭し、サインしなければならない財務関係の業務が溜まっている。

上海・湖南料理「滴水洞」

 それよりも、上海美食への渇望感が、尋常で無いほど強い。マレーシアの中華料理は美味しいと常に言っているが、ただあれは広東や福建などの南方系であり、上海料理や江浙(江蘇・浙江)系料理はマレーシアにほぼ存在しない。あっても本格派ではなく、特に庶民派のB級となると、やはり上海へ行くしかないのだ。

上海・湖南料理「滴水洞」

 マレーシア航空の上海便は何といっても、到着時間が14時、早いというメリットが大きい。16時に花園飯店(オークラ・ガーデンホテル)にチェックインし、シャワーを浴びて、ゆっくりと夕食が食べられるからだ。初日、出向くはホテルから徒歩3分の茂名南路沿いにある「滴水洞」という湖南料理店。

湖南料理「滴水洞」

 同じ辛いシリーズとして、四川料理ならマレーシアにはあるが、湖南料理となると希少部類に属し、なかなか食べられない。四川料理と違って、「麻(マー)」というしびれ感よりも素直に「辣(ラー)」、辛い。しかし、この店は有名になりすぎて、外国人もたくさん来るようになったせいか、辛さはずいぶん控え目になった。味は、相変わらず美味しい。

湖南料理「滴水洞」の毛氏紅焼肉

 元々それほど辛くない料理もある――毛氏紅焼肉。毛沢東の名前を冠した紅焼肉(角煮)。毛沢東がこよなく紅焼肉を愛した。しかし毛沢東を愛する人は今少ない。私は毛沢東好きなわけではないが、毛の哲学を日々学び、経営コンサルの業務にも多く活用している。

 毛沢東理論、その哲学は「階級闘争」という概念で貫かれている。マルクス・エンゲルスは「共産党宣言」第1章の冒頭に「今日までのあらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である」という有名な一節を書いている。その数行後に出てくる、「歴史の早い時期には、われわれは、ほとんどどこでも社会が種々の身分に、社会的地位のさまざまな段階に、完全に分かれているのを見出す」と階級について論述している。

 今の民主主義は、形上だけ平等を唱えるものの、階級は一度も消えたことがない。それを糊塗しつつも、米国西側社会はその代わりに「格差」という概念を打ち出し、国民の分断をもって戦わせ、支配階級の統治基盤を強化してきた。中身は何ら変わっていない。毛沢東理論のやり直しにすぎない。

<次回>

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