ベトナムは中所得国止まり、人口が増えても無理

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 サイゴン川を眺め、プールで泳ぐ。リゾートでゆっくりしていると、いろいろ考えることができる。ベトナムをみて感じたこと――。

An Lam Retreats Saigon River滞在中

 ベトナムは、中国などから部品や半製品を買い、組み立て、完成品を米欧市場に輸出する。加工賃で経済成長を遂げても運命は他人に握られている。加工賃そのものは上がることはない。しかし、人件費は上がる。だから、必ず限界が来る。それは5年か10年程度、ベトナムの賞味期限はおそらく2030年あたりではないかと。

 もう1つ、ベトナムが中国に取って代り、「自主的」な世界の工場になるには、高度整合されたサプライチェーンが欠かせない。しかしたとえASEAN全体で取り掛かったとしても、数年で中国レベルのサプライチェーンを整備するのは無理がある。故に、最終的にベトナムはよくてマレーシアのような中所得国になって終わりというシナリオしか考えられない。

 いわゆる「中所得国の罠」という概念には、いささか賛同できない。地球上、中所得国はむしろ常態にあたるマジョリティーだ。韓国あたりが先進国入りしたところで、先進国の枠はもう満員。21世紀以降は新規先進国が出てこない(中国が例外になるかどうか)。

 それどころか、日本のような先進国が中所得国に転落することすらある。地球上の資源総量はこれ以上伸びない。地球は資源の争奪戦に終始せざるを得ない。つまり、資源総量が人口増に追い付かないのだ。「世界の適正人口は20億人」と、東洋大学の川野祐司教授が主張しているが、上限はせいぜい30~40億人ではないかと私は思う。もうとっくに限界を超えている。

An Lamリゾートのバー

 そこで、「人口ボーナス」というもう1つの概念が出てくる。生産年齢人口の割合が上昇し、人口に対する労働力が豊富な状態となることで経済成長が促進されることを指す。「労働力」の増加は、大量生産・大量消費を前提とする。地球上の供給総量がすでに需要の上限を超えているため、逆に、人口増加を抑制しなければならないのだ。

 それでも「ものをつくり、より多くつくり、より多く売る」必要がある。資本はつねに膨張を求めているからだ。人口を増やせば経済が潤うのは、国際金融資本ないしディープステート(DS)の本能的な貪欲に基づく論理である。経済を回すには人口が必要だと、大勢の人は洗脳されている。

 人口が増えれば、経済が回り、経済が回れば、人が豊かになる。という論理が成り立つならば、人口を一番増やしているアフリカはなぜ豊かになれないのか?人間とは数でなく、質だ。動物の性欲で交尾すれば経済が良くなると思っている人がいるなら、是非今夜でもすぐにパワーを全開してもらいたい。コンド—ムをつけているのが理性の証だ。

 時代が変わった。人間は子沢山では豊かになれないことに気づいたのである。保守の中でも、知らずにリベラル左翼に洗脳され、実体的にすっかりグローバリストになっている者が少なからずいる。似非保守の問題が真左翼よりもはるかに深刻だ。

 ベトナムは人口が増えても、中所得国止まり。それ以上は伸びないし、中国に取って代わることも不可能だ。

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