上海出張(2)〜「小実惠」、本物を極める最上級紅白上海料理

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 7月1日(土)、今回上海出張の「主目的」、上海料理食い倒れ第1弾、お目当ての小さな店、威海路にある「小実惠」で食べる。午後16時45分に入店。超満員店でゆっくりお酒を飲みながらつまむのは甚だ「営業妨害」行為であるため、とにかく早く入店する以外に方法はない。しかし、早くも17時20分にお店は満員。

 白斬鶏、上海料理の代表格。これを食べれば、料理人の腕がわかる。上海料理は、「紅白料理」とも言える。醤油系は「紅」で、蒸し・茹で系は「白」。どちらかというと、「白」の方が難しいらしい。あっさり過ぎずに、上海語で「鮮(シー)」という独自の旨みをいかに出すかが決め手だ。ここの鶏肉は、どうやら独自ルートで「明るい農村」から仕入れている。鶏の生き様で死に様が決まるのだ。この鶏は間違いなく成仏している。

 白焼鱔絲(田うなぎ)。田うなぎといえば、「紅」系だが、この店では、「紅白」のどちらかを選べるようになっている。もちろん、「白」にする。田うなぎは下処理が面倒な上、食材自体が細くて食感がパサパサで通常はやや濃厚な醤油仕上げで風味を持たせるのだが、あえて白焼きで出すとは相当な自信がある。期待を裏切らない。下ごしらえも出汁も調理法も素晴らしく、「鮮」という旨みが生きている。いや、踊っている。

 さらに「白」の1品、茹でモツ2種盛り(胃袋と腸)も同じく、臭みが全くなく、「鮮」感抜群。上海料理は、「紅白料理」であるから、料理によって色んなお酒とマリアージュできる。今回は、紹興酒と白酒を持ち込み、ビールは現注、という形をとった。美食には美酒、当たり前のことだ。

 醤油エビ。そろそろ「白」から「赤」へ切り替える。醤油エビといっても、単なる醤油味ではない。独自の出汁で味覚を調整してくれている。醤油のしつこさ、喉元に張り付くような濃厚さを感じさせない。それに程よい酒フレーバー。小ぶりの川エビは殻を出す必要もなく細かく噛み砕いたところで、「鮮」味は口中に一面と広がる。いや、これはこれは、昇天感をエスカレートさせるのは、白酒である。

 店主と記念写真撮影。店が大混雑する中、「相席でもいいですよ」と店主に言っても、「大丈夫、大丈夫」と遠方からきた客に些細な優遇をしてくれる。実は入店して間もなく、17時30分から8名予約の電話が入って、店主は8名席は18時30分から予約が入っているから、無理だと断った。しかし、客は諦めず、1時間以内に必ず食べ終えると保証したところで、やっと入店を許される。こういう超のつく繁盛店である。31年の経営期間に広告もせず、ただただひたすら食通の心を捉えて離さなかった。

 レバーと腎臓の炒め合わせ。後半は「紅」シリーズ。内臓系好きな私にはたまらない1品である。ある意味で、肉よりも臓物の方がはるかに旨いと、私はそう認識している。腎臓は中華料理では「腰花」という。日本語でも、ホルモン焼きなどには「マメ」という別名を使う。医学名では食欲が損なわれるから、別名をつけたのだろうが、私は病みつき級の腎臓好きである。

 紅焼肉(角煮)。「紅」の最後の1品は、やはりこれ。日本本土では「角煮」というが、沖縄料理の場合は「ラフテー」という。中華の「紅焼肉」も実に多種多様。お店や家庭によっては味が全然違う。私が好むのは、こってりそうでこってりでない、ご飯がなくてもぺろりと食べられる紅焼肉。目的は最後にご飯以外の主食に辿り着くためだ。見事に、目的が達成した。

 最後の主食は、煎饂飩。上海料理といえば、生煎包子。ただ飽食した末に、煎り饅頭では、重すぎる。それを配慮してくれたのか、このお店は、煎饂飩。軽い。何個でも食べられてしまう。しかし、何個食べたか記憶にない。相当お酒が入っていたので、朦朧状態だった。饂飩には申し訳が立たない。次回は少しお酒を控えるようにする。

 本当にご馳走様でした。

<次回>

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