北海道(5)~カニは冬が旬?「かに道楽」の常識と非常識

<前回>

 7月26日(水)、雄武・オホーツク温泉ホテル日の出岬泊。
 7月27日(木)、天塩温泉夕映泊。

 2泊とも、毛蟹(毛ガニ)付きの食事を手配した。立て続けに同じ食材にするのは本来なら避けるべきだが、なにせ限られた時間に普段食べられない毛蟹であるから、思い切って2日連続の毛蟹食にした。

オホーツク温泉ホテル日の出岬

 「蟹は冬が旬だから、夏はどうしても味が落ちる」と思って食べてみると、最高の味だったではないか。その話をフェイスブックに投稿すると、食通の友人から続々とコメントを寄せてくれた――。

 「毛蟹は春から夏の蟹です。因みに牡蠣が美味しいのも夏です」
 「毛蟹は初夏から夏がシーズン。日本人も知らない手合いが多い」
 「通は夏カニは美味と言います。夏カニは春に脱皮し身が8割程度しかつまってないので、塩分濃度高いお湯で茹でる事になり、甘味が増した夏カニの味になると言われ、通常雄ですが、卵ありの雌も食べられたりします。一年中獲れる毛ガニでも、夏が旬とか夏カニが旨い、夏カニ食ったことあるか?と言うとちょっと食通気取りになれる食材ではないでしょうか?私も一度だけ食べたことがありますが、甘く柔らかい食感で美味で強烈に覚えています」

 いやいや、目から鱗が落ちる。私は食通気取りどころか、固定観念に縛られていたのだった。恥ずかしい。

天塩温泉夕映

 2日間、立て続けに異なる旅館で毛蟹コースを注文した。いずれもチェックインする際に「毛蟹付きの特別コースですね」と念を押されながらも、食堂で気づいたことに他にどの客も蟹を食べていない。当初は、「やっぱり夏は旬ではない」とがっかりしたが、夏カニの話を知ったあと、なぜ皆が蟹を食べないのかと新たな疑問がわいた。

 日本人は蟹嫌いになったのだろうか?

 旅館の人はさりげなく「蟹はやはり贅沢な食材ですからね」と語った。贅沢=高価、当たり前と言えば当たり前だが、海外に住んでいるわれわれにとって、毛蟹付きの特別コースを食べ、お酒を飲み、温泉を楽しみ、畳の和室で寛いで1人1泊3万円もしないわけであるから、特に外貨換算ベースでは、格安のまた格安ではないかと思ってしまうほどだ。

 またまた常識と非常識の世界である。海外在住者はもはや、外国人感覚で日本旅行を楽しんでいるところ、一種の「非国民的」な感覚に支配されていることに気付かされた。

 本当に、ご馳走様でした。

<次回>

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