汚染水問題(8)~馬鹿なことをやめよ、日本は愚に固執するな

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● 中国はなぜ水産養殖に取り組むのか?

 ここ数日、中国国内メディアでは、「塩類土地の海鮮養殖」の報道が増えている。塩害といわれるほど、中国は塩類土地の大国で、塩類土地の面積では上位10か国中3位である。

 内モンゴルのオルドス市にある水産養殖基地では、土壌にたまった塩分が多く、塩害で耕作ができない。技術者はハウスを作り、稚エビの水を調節し、高塩分・酷寒による養殖への悪影響を乗り越え、バナメイエビ6000万尾の養殖に成功した。現在、最初に養殖されたエビはすでに売れており、市場からの反響は良かったという。

 日本の汚染水放出とともに、国や地方補助のもとで、塩類地を含む各地における水産養殖が拡大する様相を見せている。汚染水放出の長期化に備えた産業政策として、将来的に水産物の輸入削減にもつながるだろう。ある意味で、中国はこの度の日本の汚染水放出を機に水産物を含む食料品の自給自足に注力し、それが戦争に強い体質づくりの取り組みと言ってもよい。

 中国は、日本の汚染水放出を単に政治的に利用していると思えない。それなりの深刻さ、リスクを感知し、先手を打っているように見える。もしや、将来的に逆方向で中国が水産物を日本向けに輸出するかもしれない。そうなれば、日本人は徹底的に笑いものにされる――。「中国産を食うもんか、寿司も刺身もやめてやる」、あるいは「中国産を食うなら、放射線魚を食ったほうがマシだ」とか、笑うに笑えない。

● 天皇陛下にも召し上がっていただこう

 農林水産省のデータによりますと、2023年上半期(1~6月)、日本からの農林水産物・食品の輸入が最も減少したのが米国で、減少額は約83億円だった。輸入が減少した主な日本産農林水産物・食品は日本酒、ホタテ貝と練り製品で、その主な産地はそれぞれ新潟県、宮城県と福島周辺で、いずれも放射能汚染水の海洋放出による影響を受ける地域だとみられている。

 日本の汚染水放出を支持している米国自分が早い段階から、輸入を減らしている。おかしくないか。そして減少額の大きい国2位は、マレーシアの16億円。マレーシアでは、日本水産物の不買運動が拡大するなか、輸入の自主的規制も始まった。国産や近隣諸国の水産物と区別する意味で「日本産の水産物を使っていません」という意味だ。

 マレーシア現地の日本料理店は、一部3割も売り上げが減少しているという。日本の水産物に対する不信感が募り、その動きはマレーシアのみならず、他国に広がる可能性も高い。

 いわゆる風評被害を払拭するために、岸田首相や閣僚たちは相次いで福島産海鮮を食べるパフォーマンスを見せた。ただそれだけでは足りない。上は国会食堂、官邸配膳から、下は市町村役所の食堂まで、挙国体制で、中国輸出できなくなった水産物をどーんと買い上げ、政治家や官僚全員が食べようではないか。その家族分も宅配してあげよう。一日三食体制だ。

 宮内庁御料にも、福島産水産物を採用し、天皇陛下・皇族の方々にも召し上がっていただこう。科学的に証明されており、絶対安全だから、問題はない。陛下ご自身が世界にその意思と姿勢を示せば、日本の信用が上がり、風評被害も減るだろう。保守層も賛同するはずだ。

● 日本政府のここが疑わしい

 私は単に日本の汚染水放出を批判しているわけではない。汚染水の処理には賛成だ。ただそのやり方はおかしいと言っている。日本はなぜ、わずか350億円を出して、中露の提案通り、汚染水の蒸発処理をしないのか?そうすれば、中国もロシアも黙るし、日本の水産物も従来通りに輸出できるし、将来的なリスクもなくなるし、みんなハッピーではないか。

 日本政府は、東電への「思いやり」で、350億円を削減し、その代わりに800億円(これから増額の可能性大)を漁業の補てんに充て、さらにいわゆる風評被害対策(メディアや世論づくり)としてどのくらいの予算を投入するかも見えていない。

 正常な人から考えれば、お金の使い方には合理性がまったく見出せない。正直に言って、そのお金のやりとりを精査する必要はないのか?怪しくないか?しかも、蒸発処理などの代替案について、国民への情報開示はほとんどない。あたかも海洋放出一案しかないような印象付けだった。余計、怪しい。

● 中国の内在的論理

 岸田首相は、日中関係の「達人」である二階俊博元幹事長に中国訪問を要請した。私が習近平なら、日本にこう言う――。「二階さんは高齢ですから、訪中させるのが過酷です。貴国が汚染水の海洋放出について代替案検討を含めて改める意向があれば、我が国から喜んで代表を東京に派遣します」と、ボールを岸田に投げる。

 さらにどうしても「政治利用」というなら、タイミングがよろしく、9月18日柳条湖事件の記念日に際して、中国は「日本による新侵略」キャンペーンを打てばいい――。「原爆を食らって戦争に負けた侵略国家が今度核汚染水で新たな侵略を中国だけでなく全世界に仕掛けている」といった調子だ。いくらでもカードがあるし、小出しにすればいい。

 日本人は中国の内在的論理を理解していない。逆の立場になったらどうか。もし、中国が原発事故を起こして炉心接触の汚染水を独自の技術で東シナ海に放出したとしよう。日本人は黙って「どうぞご自由にやってください」と言いますか?米国は黙認するのだろうか?よく考えたほうがいい。

 汚染水の海洋放出は、日本はいずれ止めざるを得ないとみている。30年も放出を続けられない。だったら、早いうちに、傷口が広がらないうちにやめたほうがいい。馬鹿なことはやめよ。

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