TOTO上海ストの最悪の影響とは?戦争ならぬ敗戦

 明日5月26日号「日経ビジネス」では、私に対する取材も含め、記事「中国ストで『全面降伏』の波紋」が掲載された。見出しはともなく、私の発言がややトーンダウンされ、温和な表現になっていた。

 一方、TOTO本社ウェブサイトで掲載されたお知らせ、「東陶華東有限公司のストライキ解除について」。――「ストライキがおよそ3日間で収束したこともあり、業績に対する影響はほとんどありません」との文言を読んで驚いた。内容は間違っていない。恐らく、「今期の業績」に対する影響は軽微か、ないかもしれない。ただ、

 今期業績以外の影響は?
 労働者の違法行為・契約違反行為による不当利益獲得の影響は?
 自社の中長期経営、業績に対する影響は?
 他の日系企業に対する影響は?・・・

 ストライキの違法性や賃金待遇の要求はともなく、総経理交代といった要求まで呑んで、何と本当に交代させてしまう。会社の人事権や経営自主権に対する不法な蹂躙をそのまま受け入れ、当期の業績さえ影響がなければ、それでいいのか。今後、会社の制度に不満、給料に不満、上司に不満と思った従業員たちは、不法にストライキ、騒動さえ起こせば企業が屈服するという前代未聞の悪しき、最悪の事例を作ってしまったのである。

 だったら、労働契約も要らない。労働現場の法の支配が崩壊する。ストライキとは何か、法的定義付けを、TOTOの経営者、法務部の責任者たちにまずよく勉強してほしい!これはストライキじゃない!国旗破壊、防犯カメラ破壊、暴力行為、会社経営権への乱暴な介入、これはストライキか?!

 宣戦布告といった正当な手続きを踏んだ戦争に負けたら、労働組合の発動による適法、正当なストライキに負けたら、「全面降伏」というのも一つの結果ではあるが、これはもはや本質的に違う次元の話である。

 致命傷となる禍根とは何か。騒動は回避できなかったものか。沈静化にもっと良い方法はなかったのか。6月13日に上海で開催される「TOTO上海工場スト・中国スト集団労働闘争現状と対策実務セミナー」で徹底的に掘り下げる。

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