汚染水問題(11)~ChatGPTによる消去法的な海洋放出否定、内外の異なる論理

<前回>

● ChatGPTに聞く

 核汚染水の処理について、海洋放出、水蒸気放出、水素放出、地下埋設、地下注入という5つの処理方法のメリット・デメリットを比較してください。安全性を最重要視することで、あなたが専門家なら、どれを推奨しますか?

【ChatGPT回答・結論部分引用】

 専門家として、最重要視すべきは安全性です。現在の科学的知識に基づいて、海洋放出は環境への影響や国際的な批判のリスクが高いため、安全性を最重要視する立場からはお勧めできません。代わりに、水蒸気放出や水素放出のような方法が安全性の観点から選択肢として考えられますが、適切な技術と設備が整備され、国際的な基準と規制に従うことが不可欠です。地下埋設と地下注入は地質と水文学的条件に依存するため、場所によっては適切でない可能性があるため、慎重に評価する必要があります。

● 海洋放出の論理

 日本の論理:地球全員の災害を日本が代理受難した。結果はみんなで分担すべきだ。しかも、リスクの量は少ないし、コストも一番安く、合理的だ。

 外国の論理:自分の問題、自分が負担すべきリスクとコストを他人・全員に転嫁する。しかも、リスクの質は予測不能、何より一番安い方法を取るのがズルい。不合理だ。

 この論理のギャップを埋め、当事者の利益をともに最大化し、損失を最小化するための(お互いに妥協・譲歩に基づく)方法は、何か?ギャップが埋まらない場合は、継続放出と制裁のエスカレートが予想される。それが30年続いたら、どうなるか?続かない場合、放出が外力によって止められるシナリオは、どんなものか?日本はその外力からどのくらいのダメージを受けるのか?損得の評価は?

 さらに、日本にダメージを与えるため、意図的に日本の放出をとりあえず座視する日本の敵はいるのか?日本の敵を敵とする者はいるのか?日本の敵と日本の対立・戦いを煽る方法は?……

 あらゆる当事者は、放出を政治的に扱っている。単なる「科学的証明」を信じる多くの日本人はいかにナイーブか。

 外国の論理について補足しておこう。私の知る限り、日本の海洋放出に賛成するマレーシア人は皆無。彼らは「日本の海鮮は食べたくない」と言っている。彼らの論理をまとめると、概ね次の通りだ。

 ① 飲めるレベルの水を、飲むなくとも、陸上に撒けばいい。なぜ、海に出すのか?それは、リスクがあることを示している。
 ② だから、日本がやることは、他人にリスクを転嫁することだ。非常に不道徳だ。
 ③ 安全性が科学的に証明されたというなら、福島原発を公開して、第三者専門家の現場検証を受け入れればいい。なぜ、隠すのか?やはり怪しい。

● 日本社会の病

 マレーシアでは、日本批判の声がどんどん上がっている。昨日に続き、今日2013年9月5日付けの経済紙南洋商報も一面と核汚染水放出の特集を連載している。2節引用しよう――。

 引用1=「日本の政策は、非常に簡単。それは、中国当局と中国国民の抗議を『非理性的』行為とし、そこに日本国内の大衆の目線を集めようと、全力挙げてプロパガンダを動員することだ。中国をはじめとする一部の国が自身の利益のために日本に挑発し、日本を貶めようとしているのだと印象づける。強力な国内世論づくりに成功すれば、本来政府に向けられるはずだった日本国民の矛先を外部に変えることができる」

 まさに本質の洞察である。日本人は基本的に内向きである。内部の「空気」づくりが上手で、今回も同じように国内向けの宣伝に余念がない。漁業関係者にはお金(今のところ1007億円)を出して黙らせる。それがまた今のところ成功していると言っていい。しかし、海外はその手に乗らない。中国だけではない。今黙っている国々はそのうち騒ぎ出すだろう。

 引用2=「時間は最良の教師であり、また最良の証人であり、事態の発展を証明してくれる。福島汚染水の海洋放出は、禍も福も背中合わせ、いずれ時間が証明してくれる」

 これもまた本質である。毒見型の賭けである。無事ならいずれフェイドアウトするが、しかしいざ問題が出てくると、日本国家国民は世界から天文学的数字の賠償金請求に直面する。時間の検証とは、数年あるいは十数年かかる。その時は、今の政治家たちはすでに交替されている。中にがっぽり稼いで引退し悠々自適な暮らしを楽しんでいる人も多いだろう。

 大方の日本人は、本質を見抜くことができずに、政府に踊らされ、結局自分や自分の家族・子供がとんでもないリスクに晒されていることには無感覚である。

 仕組みは、太平洋戦争と同じだ。

<次回>

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